CRMについて考える会

CRMという言葉が市民権を得てからどれくらい経ったのでしょうか。

当然のように「顧客との関係性が重要だ」「なにかしら施策を打ち、継続すべきだ」という論がありますが、その施策を具体的に落としきれてはないように思います。

この投稿では、じゃあどうするべきなのかについて、粗粗ですがまとめてみます。

現状の顧客に対する考え方

思うに、どのワークフレームでも顧客に対する打ち手より、その前段階すなわち「顧客にするための打ち手」の方に重きが置かれてる印象です。

AISASやULSASなどは購買行動プロセスなので、購買に至るまでのジャーニーに重きが置かれてしかるべきなので、仕方ないですね。

5A理論でさえ、顧客に対しては推奨を求めるのみの一択です。購買行動率とブランド推奨率の指標が提示されてますが、推奨行動だけで十分なのかなと少し気になります。

現実の顧客はもう少し細分化できるのではないでしょうか。

顧客の細分化

顧客にフォーカスした途端、急にフィーチャーされるのがファンベースマーケティングです。

「ファンの熱量を高めて、リピート購入させ、LTVを上げる」というゴールがあり、それの実現に向けて共感と信頼と愛着を深める施策をしようという考え方ですね。

個人的に共感できる考え方ですが、いざ具体に落とそうとすると薄くなってしまう(無能なだけかもですが)というのが悩みどころです。

一旦、フレームワークや考え方は横に置いといて、現実の顧客を想像してみましょう。

まず、顧客の最も理想的な像と言って思い浮かぶのが「アンバサダー」と呼ばれる人々です。

彼らは、企業から頼まれてもいないのにあくまでも自発的に、企業に対する好意的な意見を発信しながら、他者に対してもその企業の顧客となるように働きかけます。

口コミの価値が重要と捉えられてる現代においては、どの企業もアンバサダーを育成することに情熱を傾けることは何ら不自然ではありません。

しかし果たして、「アンバサダーこそが唯一の理想的な顧客像なのか」と言われれば、そうではなくほかにも思い当たる顧客像があるのではないでしょうか。
  • たとえば、好意的な発信はしないながらも、企業の商品に対して真摯に向き合い、改善すべき点を箴言する人々。
  • たとえば、特に企業側に発信はしないけれども、いつもその企業の製品だと意識せず購入して使っている人々。
  • また一方で、その企業に対して信者的な、どんな商品でも喜んで受け入れて、ひたすらに感謝の意を表す人々。
挙げればキリがないですが、こうした人々もある種「理想的な顧客」として扱われ、適切に育成することで将来の企業価値に繋がるのではと考えます。

とはいえ、大量のパターンがあるでしょうし、企業ごとに少しずつ異なると思うので、あえて一般化はしませんが、とにかく「買ったら顧客だ、アンバサダーにしてこう」と十把一絡げにするべきではないのではないでしょうか?

様々なパターンの顧客がいるのはわかった。で?

ここからが本論です。様々な顧客パターンを認めたとして、企業はどのようなことをすべきなのか。

個人対企業という関係性を考えたとき、「顧客と企業」以外にも、「企業と労働者」もあると思います。

この関係性の中で、企業は労働者に対して何をゴールに設定し、どのような施策を取ってるのでしょうか。

企業が労働者に求めるのは、労働力の提供ですが、生産性という観点ではパフォーマンスの最大化というゴールが一般的です。

パフォーマンスを最大限発揮させるために、企業は、大きく分けて外発的動機づけと内発的動機づけの両面から、労働者に働きかけます。

内発的動機づけに繋げるために、まずはキャリアデザインというのが常套手段ではないでしょうか。ある労働者が今後どのようなキャリアを歩みたいかを、労働者自身が主体的に考え、ドキュメントにするプロセスですが、この取り組みを通じて労働者は次に進むために何が必要かを理解し行動につながるとされています。一方で、企業は労働者のキャリアデザインを実現するための制度や設計に取り組み、実現可能性を高めていきます。

ひとつのアイデアでしかないですが、このキャリアデザインという取り組みは、顧客と企業の関係においても有効ではないでしょうか。

顧客は利益をもたらす外生変数ではなく、ともに企業を成長させてゆく重要な内生変数になります。ソーシャルメディアが発達した現代では、なおさらこの捉え方が重要だと思いますし、ソーシャルメディアを通じて取り組むことができるようになっていると私は思います。

企業はCRMをどう考えて行動すべきか

ここまでの話をまとめると、企業はCRMを単なる購入に至った人々に対する、単一的な施策として考えるべきではなく、自分自身が求める顧客像を描いた後に、それへと進むキャリアをデザインすべきです。

「カスタマーキャリア」とでも言えるのではないでしょうか。イメージとしては購買に至るまでの道のりを表したカスタマージャーニーの向こう側の話、顧客がどうすれば理想的な顧客になるかにフォーカスしたような感じです。

似たよう概念にダブルファネルマーケティングがあると思いますが、この場合のゴールもやはり推奨一択なので不十分かなといった印象で、やはり購入に至った先の顧客に対する向き合い方が不十分だと思っています。

理想的な顧客像を描き、それにそったカスタマーキャリアを描き、施策や取り組みを通じて育成をしてゆく。ここまで考えないことには、マーケティングオートメーションで取り組んでいるような顧客育成=ナーチャリングの成功とは言えないのではと考えます。

CRM深いですね。